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最高裁判所第三小法廷 昭和27年(あ)3350号 判決 1953年12月15日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人久保田国松の上告趣意(後記)について。

所論第一点は憲法三一条違反を主張するけれども、その実質は単なる法令違反の主張に過ぎないから刑訴四〇五条の適法な上告理由と認められない。そして労働基準法六条と職業安定法三二条一項とは各その立法の目的を異にするとともに対象たる行為の性質を異にし、従って、両個の規定はこれを適用する上においても必しも互いに他を排斥するものではない。それゆえ本件被告人の行為をもって右各法条の一所為数法の関係にあるものと判示した第一審判決及びこれを維持する原判決はいずれも正当であって、なんら法律の解釈に誤りはない。従って所論の職業安定法三二条一項は労働基準法六条の特別法であるという独自の見解を前提とし、前者のみの適用を主張する解釈は到底採用することはできない。所論第二点は量刑不当の主張であって、刑訴四〇五条の上告理由にあたらない。

その他記録を調べても同四一一条を適用すべき事由は認められない。

よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上 登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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